内田康夫著「遠野殺人事件」の風景(その2)

吉田巡査部長

この事件の担当になったのは吉田宗平巡査部長。47歳の職務に忠実な刑事です。周りを気にせず突っ走ってしまうため上からは煙たがれるタイプ。主人公の瑠璃子と吉田刑事を中心に物語が進んでいくことになります。

フィルムに映っていたもの

かっぱ淵の風景

発見された貴代が持っていたカメラからは5つの写真フィルムが発見されました。当日の彼女の足取りが記されている重要な捜査資料です。1本目のフィルムには「かっぱ淵」などの名所が写っていました。遠野かっぱ伝説のメインスポットで河合貴代はゆったりとした時間を過ごしたのではないでしょうか?

かっぱ淵の楽しみ方は?

かっぱ淵に触れたところでこちらの楽しみ方についても追記します。上で述べたように田舎のおじいちゃん家のそばの小川といった雰囲気。夏休みの思い出がよみがえってきそうな風景です。水のそばは気温も少し低く感じられるので夏の散策も可能。かっぱを探しながら散歩するのも旅行の楽しみ方です。ちなみに遠野の観光地では下のような「かっぱのエサ入れ」が販売されています。中に入っているキュートなかっぱのぬいぐるみとともに家に連れていってはいかがでしょうか?

行方不明者も発生

フィルムにはもう一人の人物が写っています。旅行に一緒にいくはずだった宮城瑠璃子を東京に訪ねた吉田刑事により瑠璃子の会社の同僚・松永貞子と判明します。貞子の実家も聞き込みをした結果、彼女も同じタイミングで遠野に旅行をしていたことが判明。行方不明と判断され捜査が始まります。遠野の山中を三日間捜索しますが見つからず。刑事からは「サムトの婆みたいにひょっこり出てくればいいが」との言葉がでます。

サムトの婆とは遠野物語に収録されているお話。ある日、寒戸(さむと)という集落の美しい娘が神隠しにあいました。30年後の風の強い日に老婆になって現われ、皆に合いたくなってやってきたとのこと。その後、再び去っていくというお話です。サムトの婆が消えたといわれる「六角牛山(上の写真)」を見ながら絶望的な気分になっている刑事たちの心情を想像してみるのも一興です。

第2の殺人事件が判明

懸命の捜索の結果、松永貞子は「立丸峠」というひっそりとした山中で死体で発見されます。しかも「大変なことをしました。私が」という遺書も発見。わきにあったジュース缶に残っていた成分から自殺と断定されます。この立丸峠には2018年末に立派なトンネルが開通しましたが、この小説の書かれたころは下のような険しい山道でした。このエリアは秋になると紅葉でも有名。ドライブしながら小説の世界に浸ってください。

五百羅漢と立丸峠の2箇所で起きた連続殺人事件。2人の死者の関係は?また同一犯人によるものか全く別の事件なのか?事件は遠野を離れ箱根や奥多摩などで展開していきます。このあたりはネタバレになるのでご紹介は避けることにします。次回は最終回。小説内に記述のある遠野周辺の風景を中心にピックアップしてみます。お楽しみに。

旅行の情報

かっぱ淵

常堅寺の境内にある小川一帯の名称。かっぱがいたずらをしたという伝説が残っています。 かっぱの神様をお祀りする祠(ほこら)もあり神秘的な雰囲気をもった観光地です。
[住所]岩手県遠野市土淵町土淵
[電話番号] 0198-62-1333
[アクセス] 遠野駅からバスを利用し足洗川で下車
[参考サイト]https://tonojikan.jp/kanko/kappabuchi.php

六神石神社

さむとの婆で登場した「六角牛山」は遠野三山の一つ。山麓にある六神石神社は平安時代に坂上田村麻呂が建立したとされる古刹です。六角牛山への登山の起点としても有名。登山は比較的なだらかな道をのんびりと散策することができます。山頂は遠野の全景を眺められる絶景スポットです。
[住所]岩手県遠野市土淵町土淵
[電話番号] 0198-62-1333
[アクセス] 遠野駅からバスを利用し足洗川で下車
[参考サイト]https://tonojikan.jp/kanko/kappabuchi.php

遠野ジンギスカン

旅行では食事も楽しみのひとつ。遠野で外せないのがジンギスカン料理です。焼いた羊肉に専用のタレを付けて食べるのが遠野スタイル。北海道と一味違う独特の香りと味が人気です。事件巡りのスタミナ付けにもどうぞ。下には人気店「あんべ」の情報を掲載いたします。
[住所]岩手県遠野市早瀬町2-4-12
[電話番号] 0198-62-4077
[アクセス]釜石線・遠野駅から徒歩で15分ほど
[参考サイト]https://www.anbe.jp/