宮本輝著「地の星」の風景(その4)

選挙活動

ドテ焼き

熊吾は大阪に立ち寄ります。大阪時代に商売の取引をきっかけに友人となった丸尾運送店の店主・千代麿(ちよまる)にあることを依頼するためでした。千代麿は「大将、このドテ焼き、大阪で一番うまいドテ焼きでっせ」と丼(どんぶり)鉢で料理をふるまいます。熊吾は井手なる青年が大学で職を得るまで居場所のない麻衣子をここで働かせようと考えます。下に引用させていただいたのは大阪・新世界にある人気店「てんぐ」のドテ焼きです。これをつまみにビールを飲みながら「もし丸尾運送店に必要なら、ぜひや雇うてもらいたい女がおるんじゃが」と切り出す熊吾の姿をイメージしてみます。

千代麿が・・

麻衣子のことにかたがついた後、千代麿から「子供ができました」と打ち明けられます。千代麿には長年連れ添った奥さんがいますが実は他の女性との子供とのこと。熊吾に相談にのってもらうため一緒にその女がやっている屋台のおでん屋に向かいます。下に引用させていただいたのは「父子草」なる映画のワンシーン。 淡路恵子さんが女将に扮するおでん屋にて渥美清さんと石立鉄男が争う場面とのことです。この写真を利用して「地の星」のシーンもイメージしてみます。淡路恵子さんには「女にしては骨組みの太い・・・眉間に小さな黒子がある・・・・ある瞬間には美人に見えるのだが、別の瞬間には千代麿の妻よりも不器量に見えた」千代麿の愛人を、渥美清さんには強面の熊吾の姿をおきます。また隣にいるであろう石立鉄男さんには前巻「流転の海」で「かぼちゃを踏みつぶしたような顔」と表現された千代麿の姿をかぶせてみます。

深浦漁港にて

愛媛に戻った熊吾は再び和田茂十の選挙参謀としての活動を開始。選挙の出陣式で演説をすることになり会場となる深浦漁港ちかくの蒲鉾工場に向かいます。途中に立ち寄った長老から仲間と考えていた妹の愛人・野沢政夫が熊吾をつけ狙う「わうどうの伊佐男」と通じていること知った熊吾。漁港にて政夫を問い詰めます。台風に備え「港では、何隻かの鰹船を固定させる作業に精をだす・・漁師たちが、声を掛け合って太い網を投げたり引っ張ったり結んだりしていた」とあります。下に引用させていただいたのは現代の深浦漁港の写真です。まずは奥に見える海にいくつかの鰹船と漁師たちをおきます。その手前の港には熊吾と、いつになく激しく反発する政夫の姿をイメージしてみます。

潮(うしお)会

この日の式典は2部制で最初は「潮会」なる茂十の後援会の集まり。夜には小学校の講堂を使用しての一般演説というスケジュールでした。熊吾が演説をしていると窓の外から「わうどうの伊佐男」がヤジを飛ばしてきます。下に引用させていただいたのはある会社の式典の写真です。この写真の中央では熊吾が演説、近くのいすには茂十や町の有力者が座っているとします。そして手前にある(?)窓から大声でさけぶ伊佐男の声や姿をイメージしてみます。

和田茂十君を励ます会

伊佐男の乱入はありましたが潮会の集会はなんとかスケジュール通りに終了します。その流れで「和田茂十君を励ます会」と題した決起大会のため小学校の講堂へ移動。今度は伊佐男は現れず、熊吾は茂十への応援演説を予定通り終えます。そのまま事無く終了するかと思えましたが会の途中、友人死去の電報がとどいたり、房江の浮気の噂話を聞いたりと熊吾にはショックなことが続きます。下に引用させていただいたのは旧宇和町小学校を利用した「宇和米博物館」の写真です。ここに小雨の夜、式典を抜け出し講堂の外で友人を偲ぶ熊吾の姿をここに置いてみます。ここからひと悶着起こりますが、小説の山場の一つなので本文にてお楽しみください。

旅行の情報

てんぐ

千代麿が大阪で一番うまいドテ焼きといって熊吾にふるまった際に登場してもらったお店と料理です。新世界のじゃんじゃん横丁にあり串かつの人気店としても有名。こちらのドテ焼きは下に引用させていただいたように、トロトロに煮込まれたすじ肉に白味噌タレがたっぷりとかかった料理です。お酒のつまみとしても相性抜群です。
【住所】大阪府大阪市浪速区恵美須東3-4-12
【電話】06-6641-3577
【アクセス】御堂筋線・動物園前駅から徒歩で約2分
【参考サイト】http://osietesite.com/gourmet/osaka/osakawasyoku/tengu

宇和米博物館

「和田茂十君を励ます会」の会場として登場してもらった昭和3年建築の小学校校舎です。一本松からも比較的近い愛媛県内にある旧校舎を移築し、お米の博物館として再利用しています。館内には日本最長の109mの木造廊下が昔のまま残り「ぞうきんがけレース」なるイベントにも参加できます。カフェやショップなどもあり休憩に立ち寄るのにもおすすめです。
【住所】愛媛県西予市宇和町卯之町二丁目24番地
【電話】0894-62-6517
【アクセス】JR卯之町駅から徒歩12分
【参考サイト】http://komehaku.jp/