宮本輝著「血脈の火」の風景(その5)

食事療法を開始

入院生活

糖尿病の権威・小谷医師の診察を受けた熊吾は、食事療法を学ぶために入院することになります。現状を訊いた熊吾に対し「悪いですな。このままの生活を続けると、半年後には眼底出血を起こし、白内障になり・・・・・」と恐ろしいことを言われます。また「松坂さんの膵臓は、まだインシュリンを製造しています。正常な人の10分の1くらいですが・・・まかなう方法はたったひとつです」とのこと。その方法とは食事療法と運動でした。木造の入院病棟の窓からは「淀の京都競馬場が見えた」とあります。下に引用させていただいたのは昭和11年に竣工された京都競馬場の写真です。熊吾が体や事業のことを心配しながら眺めていたのもこのような景色だったでしょうか。

病院でのてっちり鍋

熊吾は食事療法の一環でてっちり鍋を食べることになります。小谷医師は熊吾の食べる分を別皿にとり分け「てっさは、7切れぐらい。白子は駄目。骨付きの身は3切れ。野菜は好きなだけ結構。ご飯はこれだけ」といいます。「先生、人間がこれだけしか食べんで生きていけるもんですかのお」と訊ねる熊吾に対し「大丈夫、充分、生きていけます」と答え「野菜で腹をふくらませるのがこつですな」などとアドバイスします。下に引用させていただいたのはあるお店の美味しそうなふぐ料理の写真です。この半分くらいの量の「てっさを一切れずつ、噛みしめて食べる」熊吾。「なさけなさとおかしさが同時に押し寄せてきて」付き添いの房江とともに笑ってしまう姿が印象的です。

辻堂との再会

資金繰りに困っていた熊吾ですが以前、松坂商会の社員として働いていた辻堂が助け舟を出してくれることになります。知り合いの金融業者から無担保で借りられるとのこと。辻堂立ち合いのもと大阪の喫茶店で取引を交わすことになります。喫茶店で辻堂は「このあたりは闇市だらけだったのに、すっかり変わりましたねェ。この界隈を、革のコートを着て、うろついていたなんで、なんだか嘘みたいですよ」と周辺の開発の早さに驚きます。「闇市は、形を変えて、阪神百貨店の裏側で迷路みたいな商店街になりよった」と返す熊吾。下に引用させていただいたのは昭和時代の阪神百貨店(手前左)周辺の写真です。「迷路みたいな商店街」があったのはその奥側の方でしょうか。そのエリアは伸仁たちが生き生きと遊ぶ場所でもありました。

伸仁が賭けマージャン?

熊吾は野田阪神駅で伸仁が観音寺のケンなどと待ち合わせているのを目撃、後をつけます。到着したのは雀荘。ケンの仲間たちと麻雀を始めます。最初は「子供が賭け麻雀なんかしやがって」と伸仁の頭を殴った熊吾ですが仲間たちに懇願されて1回だけ続けることを許可。熊吾は伸仁の体調を監視するといいながら後ろに陣取り、サインで作戦指示をしてゲームを有利に進めます。下に引用させていただいたのは1984年に公開された「麻雀放浪記」の写真です。真田広之さんや鹿賀丈史さんなどが演じ話題になりました。「イカサマや。こんなチビにイカサマでやられたなんてわかったら、わしらは盃を返さなあかんで・・・」と嘆いて仲間の一人が伸仁の鼻をつまむ、ほんわかとした場面を重ねてみます。

旅行の情報

熊吾が食事療法で食べた「てっちり」の写真を見て実際に食べたくなった方もいらっしゃるのでは?ここではふぐ料理が食べられる人気チェーン店を2つご紹介します。

玄品(げんぴん)

全国に80店舗以上もお店がある「とらふぐ」の専門店です。こちらの売りはふぐ刺し・てっさ。通常より数ミリ厚いカットにおり弾力がある絶妙な味わいを楽しめます。熊吾が食べたふぐ鍋・てっちりは1980円。熊吾には栄養が多すぎる特大ぶつてっちりは3000円となっています。他にも熟成骨付きふぐやふぐ身、焼きふぐ皮がセットになった三種盛り(2100円)などお得なメニューが目白押しです。
【住所】大阪府大阪市中央区難波1-1-1-3(法善寺総本店)
【連絡先】06-6213-9444
【アクセス】地下鉄御堂筋線なんば駅から徒歩で約2分
【参考サイト】https://www.tettiri.com/

とらふぐ亭

関東圏では店舗数ナンバーワンのふぐ料理の専門店です。「泳ぎとらふぐ」なる泳いだまま届けられる新鮮なとらふぐがセールスポイント。名物の泳ぎとらふぐセット(4980円)は皮刺しや泳ぎてっさ、泳ぎてっちり、なべ皮の他デザート類などがセットになった豪華な料理です。小谷医師が見せつけるように飲んでいたひれ酒(700円)も一緒にお試しください。
【住所】東京都新宿区歌舞伎町2-11-7(新宿本店)
【連絡先】03-3209-2919
【アクセス】JR新宿駅から徒歩で約10分
【参考サイト】https://www.torafugu.co.jp/