内田百閒著「第三阿房列車」の風景(その7最終回)

不知火阿房列車(後編)

青島観光

宮崎での2日目は天気が良く、気分も良かった先生は山系君を誘って観光に行きます。この周辺は昭和40年代には新婚旅行ブームになりますがこの時代にも「修学旅行の生徒達や、講中の団体旅行などで橋の上は雑踏し、道を避けなければならない程」の名所でした。下に引用させていただいたのは名勝「鬼の洗濯岩」の写真です。「おかしな形をした黒ずんだ色の奇石怪石が人の手で列(なら)べた様なきちんとした間隔で海に向かってポーズを取っている」と先生が記述した景色は今も変わっていません。

高千穂峰も見えた!

宮崎に2泊した後、鹿児島までの汽車旅を続けます。子供の頃、紀元節(現・建国記念日)に歌った「雲にそびゆる高千穂の・・・」なる歌を思い出しますがあいにく曇っていてなかなか高千穂峰の姿を見ることができません。あきらめきれない先生は汽車内の学生に高千穂峰の方向を確認するなど準備万端、都城駅を出たあたりからやっと霧が晴れてきます。下に引用させていただいたのは都城付近からの高千穂峰の雄姿です。「大きな箆(へら)でそいだ様な三角の山で何の奇もないが、見たいと思って意地になっていた山が見えたのは有難い」と仏頂面ながらも満足そうな先生の姿をイメージしてみます。

「かんかん」で体重測定

鹿児島では主治医から旅の途中で体重を計るように言われたことを思い出します。下に引用させていただいたのは「看貫秤(かんかんばかり)」なる器具の写真です。略して「かんかん」とも呼ばれた分銅を使った重量計で鹿児島駅の小荷物扱所にも置かれていました。「忙しい所に飛んだ荷物が割り込んですまなかったが」としながらも鉄道関連の知り合いの口利きで駅の「かんかん」を利用させてもらいます。ここではこの秤にのった少し恥ずかしそうな先生の姿を想像してみます。

再び松浜軒へ

最後の阿房列車なので再度、松浜軒の場面も取り上げることにします。今回の旅行では2泊しますが雨男ヒマラヤ山系君の神通力によって連日雨模様、訪問時には枯れていた池の水があふれるほどになります。下に引用させていただいたのは天気の良い日の松浜軒の姿です。ここでは縁側にあったと思われる「殿様用の飛んでもない大きな脇息にもたれて吹上の老松を眺める」リラックスした先生の姿を想像してみます。

大手饅頭を完食

今回の旅行途中、岡山駅にて親友の真さんから大好物の「大手饅頭」をもらいました。「行きがけに手渡しされては困る」などと言っていた先生ですが結局、松浜軒で食べきってしまいます。下に引用させていただいたはその大手饅頭の写真、薄皮と上品な甘さのあんこが特徴の岡山名物です。先生はふかし直して食べていましたがそれ以外にもトースターで焼いたり冷蔵庫で冷やしたりと様々な食べ方があります。

https://twitter.com/yousan_doll/status/1321392074965413892

「さる」がいなくなってから飲みなおし!

雨の中、不知火の海などの観光や知り合いとの宴会を楽しんだ先生の旅行も終盤、東京への帰途につきます。急行「きりしま」に乗り込んだ先生は旅行に出かける朝、悪夢に出てきた「さる」に似た男がいるのを発見します。男は先生をじろじろ見てくる不気味な存在、旅の間に何度か登場します。気になりながらも窓の外の雷を見ながら山系君と話しをしているうちに男の姿も見えなくなり「さあおいしく飲みなおそう」と気分を切り替えます。下に引用させていただいたのは昭和29年の国鉄の食堂車内の写真です。愉快そうな顔が印象的なため2度目の引用となります。右が山系君、左が先生と見立てて楽しかった阿房列車の締めくくりにさせていただきます。

https://twitter.com/showaspotmegri/status/1126762886716510208

旅行の情報

青島

百閒先生が宮崎宿泊の際に出かけた観光地です。先生が訪れた青島神社や「鬼の洗濯板」は今でも観光の目玉。他にも南国植物を鑑賞できる「宮交ボタニックガーデン青島」や夏にオープンする「青島ビーチパーク」など当時はなかった観光スポットもできています。散策後には青島温泉などでリフレッシュして帰るのもおすすめです。
【住所】宮崎県宮崎市青島
【電話】0985-21-1791(宮崎市観光課)
【アクセス】青島駅から徒歩約10分
【参考サイト】https://www.miyazaki-city.tourism.or.jp/spot/10001

永尾剱神社

百閒先生は八代の「白島」なるところに不知火の海を見にでかけています。当時、白島は海水浴や潮干狩りもできる砂浜の景勝地でしたが今は埋め立てられ港になっています。現在、不知火の海が綺麗に見える場所として有名なのが「永尾剱(えいのおつるぎ)神社」です。713年創建の海童神(わだつみのかみ)を祭神とする神社で海中に佇む鳥居が特徴です。8月末から9月中旬の風のない夜には不知火(しらぬい)と呼ばれる蜃気楼が起こり幻想的な雰囲気になります。徒歩5分ほどのところに「道の駅不知火」もありドライブの立ち寄りにも便利です。
【住所】熊本県宇城市不知火町永尾615
【電話】0964-32-1604
【アクセス】JR松橋駅から徒歩約20分
【参考サイト】https://kumamoto.guide/spots/detail/12226