村上春樹著「羊を巡る冒険」の風景(その4)

鼠からの依頼

北海道からの手紙

1978年の5月、「鼠(注)」からの手紙が届きます。書かれてあったのは2つの依頼でした。一つ目はジェイズバーのマスター(ジェイ)と元彼女の2人に「さよならを伝えてほしい」というもの、もう一つは「(羊の写真を)どこでもいいから人目につくようなところにもちだしてほしい」というものでした。下に引用させていただいたのは北海道の美深町の消印が入った手紙の写真です。「回送の便箋ののりを取ると、消印は読み取れなくなってしまった」とありますが、後の内容などから推測すると「鼠」は美深町周辺の郵便局からこの手紙を出したと思われます。ここでは下のような郵便局で手紙を出す「鼠」の姿を想像することにします。
(注)鼠:「僕」の大学時代の親友で「風の歌を聴け」や「1973年のピンボール」などでも登場、5年前に突然、街(神戸)を出て以来連絡が途絶えていた

ジェイズバー

「鼠」の依頼を受けて2人にさよならを伝えるために「僕」は神戸に向かいます。最初に行ったのはジェイズバー、学生時代に鼠とともに毎日のように通った場所です。「鼠の手紙を取り出してジェイに渡した。ジェイはタオルで手を拭いて二通の手紙にさっと目を通し、それからもう一度言葉を追って読んだ」とあります。下に引用させていただいたのは映画「風の歌を聴け」のジェイズバーでの一場面です。小林薫さん(僕・画面中央)と坂田明さん(ジェイ・画面奧)の姿をお借りして、(ジェイ)「ちゃんと生きてたんだね」(僕)「生きてるさ」という会話をイメージしてみます。

海で缶ビールを

混みだしたジェイズバーを後にした「僕」は「川沿いの道」を「水の流れとともに」歩きます。そして「途中にあった酒屋で缶ビールを二本買って紙袋に入れてもらい、それを下げて海まで歩いた」とあります。下に引用させていただいたのは小説に出てくる「五十メートルぶんだけ」の海のモデルとされる芦屋川河口の写真です。ここでは「海の匂いと雨の予感」のする雰囲気のなかこの周辺の防波堤に腰掛け、ビールを飲む僕の姿を想像してみます。

ホテルで映画を

「僕」はもう一つのミッションを果たすために「鼠」の元彼女に連絡し、次の日に宿泊しているホテルのコーヒー・ハウスで会うことになります。テレビでは「古い潜水艦もののアメリカ映画」を放送、内容は「艦長と副艦長がいがみあっているうえに潜水艦は老朽品で・・・という筋だったが、結局何もかもうまくいった」というものでした。下に引用させていただいたのは「深く静かに潜航せよ」という1958年のアメリカ映画の写真です。クラーク・ゲーブル(艦長)とバート・ランカスター(副艦長)が競演した有名な映画で2人が対立する場面があるのは小説と類似しています。ここではこの映画のシーンをお借りして「こんな何もかもうまくいくなら戦争もそれほど悪くはない、といった感じの映画だった。そのうちに核戦争で人類は死滅したが、結局は何もかもがうまくいった、という映画ができるかもしれない」との感想を抱く「僕」をイメージしてみます。

ホテルのコーヒー・ハウスで

5時過ぎにホテルのコーヒー・ハウスで鼠の元彼女と会い2人で鼠との思い出話などをします。そして「6時を過ぎてラウンジはカクテルアワーにかわ」ると「僕」は「お酒でも飲みませんか?」と提案します。下に引用させていただいたのは美味しそうなソルティドッグの写真です。ここではこのお酒を飲みながら「私の非現実性を打ち破るには、あの人の非現実性が必要なんだって気がしたのよ」という元彼女の姿をイメージしてみます。「鼠」からの手紙を彼女に渡し「僕」のミッションは終了します。

次からは本格的な「羊をめぐる冒険」が始まります。「耳専門のモデル」や「黒服の男」も再び登場し舞台も北海道へと移っていきます。お楽しみに。

旅行の情報

芦屋川周辺

「僕」は神戸のジェイズバーの帰りに「五十メートルぶんだけ」の海外に向かい芦屋川沿いを歩きます。この周辺は桜の名所としても有名で春になると花見客でも賑わうところ、下に引用させていただいたような絶景になります。このような季節の良い時にピクニック気分で「羊を巡る冒険」の舞台巡りをしてみてはいかがでしょうか。
【住所】兵庫県芦屋市西山町1(阪急芦屋川駅)
【連絡先】0797-38-2033(芦屋観光協会)
【アクセス】神戸三宮駅から電車で約15分
【参考サイト】https://www.hankyu.co.jp/station/ashiyagawa.html

ピノッキオ

同じ神戸内で人気のレストランを一つご紹介しておきます。「ピノッキオ」は村上春樹氏が学生時代から利用する有名スポットでノーベル賞の発表時にはファンが集まることでも知られています。看板メニューのピノッキオピザはホワイトソースとモッツァレラチーズの組み合わせが絶品、薄めのサクサクの生地も食べやすいと評判です。村上春樹ファンの聖地ともいわれているお店で美味しいイタリアンをご堪能ください。
【住所】兵庫県芦屋市西山町1(阪急芦屋川駅)
【連絡先】078-331-3330
【アクセス】神戸三宮駅から徒歩約5分
【参考サイト】http://www.collodi.co.jp/pinocchio_top/