内田康夫著「遠野殺人事件」の風景(その1)

物語の概要

昨年(2018年)に惜しまれつつ亡くなった有名作家・内田康夫氏の人気小説です。民話と伝説の里・遠野で起きた殺人事件の謎を推理する物語。テレビドラマ化もされている名探偵・浅見光彦や信濃のコロンボ・竹村警部などの人気の登場人物が出てこない少しレアーな作品です。ヒロインは宮城瑠璃子なる東京の23歳の会社員。先輩の河合貴代から遠野旅行に誘われるところから物語が始まります。

小説の時代背景

この小説は1983年にカッパノベルズから刊行されたものです。この時期(1985年)には東北新幹線が新花巻駅まで開通。遠野駅に至る釜石線との接続も良くなり、遠野への観光客が増えた時期です。現在では宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」をイメージした「SL銀河」も運行。観光列車としてもにぎわいを見せています。

遠野について

舞台となる遠野は盛岡藩・南部氏の城下町。馬の産地としても栄えたところです。明治以降は酪農などの村として文化を守ってきました。100年ほど前に柳田国男が「遠野物語」を発行。民話や伝説の宝庫として一躍有名になりました。原作は今も文庫本などで読むことができます。近年では水木しげる氏の「漫画・遠野物語」も人気。水木ワールドに浸りながら昔の遠野にタイムスリップできます。

駅前にはかっぱが鎮座!

遠野物語にはカッパがたびたび登場。街のシンボル的な生物(?)です。駅を出るといきなり下のような光景が!こちらは交番の建物となります。ウインクしてくれているのがかわいいですね。他にもカッパの乗ったポストなど遠野にはいたるところにカッパの姿があり街歩きの楽しみの一つになります。

物語の始まり

遠野旅行のスケジュールは?

河合貴代の遠野旅行計画は1日目に駅近の観光地を巡り、2日目には曲がり家やオシラサマの話を聞いたりして観光。最後の日に三陸海岸に抜けて帰るというものです。曲がり屋とは「千葉家住宅」のことでしょうか?江戸末期に造られた小城のような豪農の屋敷。馬小屋が家と直角に連結された曲がり家というスタイルが特徴です。南部地方の農村の代表的な建物としてこのエリアの有名観光コースになっています。

オシラサマ

「オシラサマ」とは蚕や馬の神様ともいわれ、農家の娘と馬の悲恋の物語の伝説をもとにしています。馬と娘の恋を許さなかった娘の父が馬を殺し、それを悲しんだ娘も一緒に天に上ったというお話。それにちなんで馬と娘をかたどった人形を奉納する風習がありました。遠野伝承園の「オシラ堂」には1000体ものオシラサマが奉納されて壮観な景色となっています。

殺人事件発生

宮城瑠璃子は婚約者となる土橋剛との予定が入り遠野には行けませんでした。遠野への旅行前日、河合貴代とビアホールで楽しくおしゃべりをして別れた瑠璃子。後日、遠野の五百羅漢で河合貴代が絞殺されるという事件が発生します。五百羅漢は江戸時代、天明の飢饉(ききん)で亡くなった人たちを供養するため近くの寺の僧が自然の花崗岩に像を彫ってつくった石像群。 下のような険しい地形なので観光の場合は履きなれた靴でお出かけください。

上は遠景なので分かりにくいですが近くで見ると下のように彫刻された羅漢の顔と苔(こけ)が調和して美しい景色になっています。貴代はここで羅漢たちに見守られるようにして亡くなっていたとのこと。小説の世界に浸ってあたりを見渡すとその場の緊迫感が伝わってくるかもしれません。

貴代が残した写真フィルムなどから警察は推理を進めます。次回はどんな風景が待っているでしょうか?ネタばれを避けながらご紹介していきます。

旅行の情報

伝承園(でんしょうえん)

以下ではこちらでご紹介した観光地の公式ホームページなどをリンクし概要もご紹介します。
小説に登場する「千葉家住宅」は現在改修工事中。令和7年にグランドオープン予定です。代わりに伝承園には下のような「菊池家住宅」があり典型的な南部の農家の雰囲気を感じることができます。他にも「オシラ堂」や水車小屋など伝統的な遠野の文化に触れられる人気スポットです。
[住所]岩手県遠野市土淵町土淵6地割5番地1
[電話番号] 0198-62-8655
[アクセス] レンタル自転車で遠野駅から30分
[参考サイト]http://www.densyoen.jp/

五百羅漢

小説で殺人現場となったスポット。飢饉(ききん)で亡くなった人々を供養するために大慈寺の義山和尚が作ったものです。風化や苔のため分かりにくいものも多いですが足元に気を付けてじっくりと探してみてください。
[住所] 岩手県遠野市新町
[電話番号] 0198-62-1333
[アクセス] 遠野駅から車で約10分
[参考サイト]https://tonojikan.jp/kanko/gohyakurakan.php