内田百閒著「第一阿房列車」の風景(その6)

奥羽本線阿房列車(前章)

浅虫温泉にて

浅虫温泉では温泉に入ってお酒を楽しんだ一行。次の日の朝は陸奥湾の景色が綺麗に見えます。海に浮かぶお椀形の「湯の島」が気になった先生は女中さんに色々な質問を投げかける場面が描かれています。「散髪に行かない頭のような樹木」や「舟でお参りに行くわけでもない鳥居」などは今でも残り先生当時の風景を見せてくれています。

青森駅で散髪

青森駅で乗り換え街時間が2時間もあったため先生一行は駅のそとをぶらぶらします。青森駅周辺は戦災のひどかった場所。この旅が行われたのは昭和26年ですから復興の途中だったと思われます。ここでは戦災の跡が消えた昭和35年の青森駅前の写真(下)から先生たちをイメージしていきます。 散髪屋で髭剃りをしようと思い立った一行は、青森駅近の横丁の焼け跡にバラックで営業する床屋を見つけます。路地にはニワトリやはなを垂らした子供がいる舗装されていない道。この写真の中にはそんな場所がまだ残っていたのではないでしょうか?

弘前駅周辺で

青森駅から乗った奥羽本線は西に向かいます。弘前駅の手前では円錐形の綺麗な山が見えてきます。山系君に聞くと津軽富士として有名な岩木山とのこと。もっとはっきり見たいと思いましたが光線の具合か雲がかかっているのか判然としないとのこと。先生が見たのは下の写真のような光景だったかもしれません。

お腹が減って・・・

大館駅についたころお腹が減りだした2人は軽食をとることにします。駅売りでは販売していたのはアンパンのみ。あんこが嫌いな山系君は食べられません。そこで先生が提案したのは「僕があんを食べ貴君は皮を食べろ」というもの。山系君が入手できたのはへそパンのねじれたようなものでした。下は普通のへそパンの写真です。これにねじりを入れた複雑な形状をしていたのでしょうか?あんこだけを取り出すのは難しそうです。先生は山系君の目の前で一人で食べますが「沼宮内(ぬまくない)」といって止めてしまいます。

秋田で一泊

秋田には夜に到着。こちらは戦争の被害が少なく駅からの道の両側には整然と家が並んでいました。下の写真は中でも威容を誇った「旧秋田銀行本店」。今でも「赤れんが郷土館」として残っています。立派な玄関の大きな宿に到着した先生たちは山系君の(鉄道局の)仕事仲間とともに早速お酒を始めます。ここでは昔ながらの重厚な建物の2階に宿泊した先生たちが気持ち良く酔っぱらって軍歌を歌っている声や姿を想像することにします。

朝ごはんのはたはた

前日飲みすぎた先生はいつものように朝飯は食べません。食前にあがったのが「はたはた」。下の写真のような肉厚の塩焼きだったでしょうか?はたはたは雷魚(かみなりうお)とも書き秋田などの日本海側で食べられる名物グルメ。雷の日に産卵のため大量に海岸近くにやってくるためこの名前がついています。味が気になる先生は山系君に「うまいかまずいか?」と問います。「どうもありません」と例によってはっきりしない回答の山系君。そのうちに雷が鳴りだします。

午後2時過ぎに横手駅に到着。立ち食いそばで腹ごしらえをした一行は旅を続けます(次回に続く)。

旅行の情報

湯の島

浅虫温泉の海上にある綺麗な島。先生が気になった島として登場します。4月の「カタクリ祭り」の期間中に限り「海の駅あさむしマリーナ」から船で渡ることができます。往復1時間位の所要時間ですが下の写真のような可憐な紫色の花を見ることができる穴場の観光スポットです。
[住所]青森県青森市大字浅虫螢谷352
[電話番号]017-752-4173(海の駅あさむしマリーナ)
[アクセス]JR浅虫温泉駅から徒歩3分
[参考サイト]http://www.asamushi.com/sightseeing/yunoshima.html

秋田市立赤れんが郷土館

秋田銀行本店として明治45年に完成した建物。先生一行も車で脇を通過したかもしれません。外観のレンガ造りやバロック様式のインテリアは当時の姿を保っています。1階には当時の窓口が再現されていて昭和の時代にタイムトリップできます。
[住所]秋田県秋田市大町3-3-21
[電話番号] 018-864-6851
[アクセス]JR秋田駅から徒歩で15分
[参考サイト]https://www.city.akita.lg.jp/kanko/kanrenshisetsu/1003617/1009785/1002315.html