村上春樹著「1973年のピンボール」の風景(その1)

双子の登場

村上氏のデビュー作「風の歌を聴け」の続編です。「風の歌を聴け」では主人公の「ぼく」は学生でしたがこの小説では翻訳の仕事をする共同経営者として描かれています。相棒の鼠も登場。しばらく一緒に暮らすことになる「双子」とは?ネタバレをできるだけ避けSNSの力を借りながら印象的な場面をご紹介していきます。

土星人の話

冒頭で「ぼく」は「見知らぬ土地の話を聞くのが病的に好きだった」とあります。最初に、ある「土星人」の話が紹介されています。彼は「あそこは、・・・・ひどく寒い」といいます。太陽から地球より遠く離れた土星は表面温度が-120度程度とされます。また、土星は引力が強いため下に引用させていただいた写真のような輪を保っているともいわれます。引力の強さについて土星人は「口から吐き出したチューインガムをぶっつけて足の甲を砕いた奴までいる」と嘆きます。

学生運動に参加していた彼(土星人)らが占拠した大学の棟内には音楽室があり毎日レコードを聴いて暮らしていたとのこと。警察の機動隊が突入した際にはビバルディの「調和の幻想」が流れていたとあります。下に引用させていただいたように激しい衝突の風景を想像しにくい曲です。

金星人の話

「ぼく」は金星人からも話を聞きます。「金星は雲に被われた暑い星だ。暑さと湿気のために大半の住民は若死にする」とあります。金星人は「たとえ今日誰が死んだとしても僕たちは悲しまない。・・・その分だけ生きているうちに愛しておくのさ」といいます。下に引用させていただいたのはレーダーによる金星の写真です。硫酸の暑い雲に被われ肉眼で表面を見ることはできないそうです。ここでは、いつ死んでもおかしくない金星の環境を思い「そうでもしなければ・・金星は悲しみで埋まってしまう」とつぶやく金星人の姿をイメージしてみます。

直子のこと

「ぼく」は彼らの話だけでなく同時期(1969年)につきあっていた直子からも故郷の話をきいています。「なにしろ街なんてものじゃないのよ・・・プラットフォームの端から端まで犬が散歩しているのよ」。時は過ぎて1973年、死んでしまった直子のことを忘れるために彼女の故郷に向かいます。「1時間ばかり待ったが犬は現れなかった。10本ばかりの煙草に火を点け、そしてふみ消した」とあります。下に引用させていただいたのは長野県にあるとある駅の写真です。ここに直子が言ったような犬が往復する姿をイメージしてみます。

ピンボール研究書

村上氏は「これはピンボールについての小説である」と文中でいっています。そしてピンボール研究書の「ボーナス・ライト」なる専門書を登場させてこう述べます「あなたがピンボール・マシーンから得るものは殆ど何もない。数値に置き換えられたプライドだけだ」。また、ピンボールの目的について以下のように述べます。「エゴの拡大ではなく縮小にある・・・もしあなたが自己表現やエゴの拡大や分析を目指せば、あなたは反則ランプによって容赦なき報復を受けるだろう」となります。下に引用させていただいたのは現在のピンボールマシンの写真です。「ボーナス・ライト」の序文では「よきゲームを祈る(バヴ・ア・ナイス・ゲーム)」と結んでいます。この小説を読んでピンボールをやりたくなった方も多いのではないでしょうか。

双子が家に・・・

よく晴れた日曜日、「目を覚ました時、両脇に双子の女の子がいた」とあります。「窓の外のゴルフ場の金網には見知らぬ鳥が腰を下ろし、機銃掃射のように鳴きまくっていた」ような日でした。下に引用させていただいたのはとあるゴルフ場の金網越しの写真です。この景色の手前には「ぼく」の家があり、双子がコーヒーをたてトーストを焼いている情景をイメージしてみます。

旅行の情報

ザ・シルバーボールプラネット

ピンボールをテーマにした物語ということで、ここではピンボールを楽しめるお店を一軒ご紹介します。「ザ・シルバーボールプラネット」は大阪アメリカ村「心斎橋BIGSTEP」の3Fにあるピンボールを中心にしたゲームセンターです。1970年代からのピンボールを100台以上装備。下に引用させていただいた写真のように女性やファミリーでも利用しやすい明るい雰囲気になっています。
【住所】大阪府大阪市中央区西心斎橋1-6-14
【電話】06-6258-5000
【アクセス】地下鉄御堂筋線・心斎橋駅から徒歩約2分
【参考サイト】 http://www.silverballplanet.jp/