井上靖著「しろばんば」の風景(その7最終回)

受験勉強

新しい家庭教師

中学受験まであと一年もなくなったころ、洪作は犬飼(いぬかい)という小学校教師のところへ毎日勉強を見てもらいにいくことになりました。犬飼は渓合(たにあい)の旅館に下宿している設定で、小説のモデルになった旅館は湯ヶ島の「落合楼(おちあいろう)村上」です。

今も残る創業100年以上の伝統ある老舗で、湯ヶ島でも有数の高級温泉宿です。下に引用させていただいた写真のどこかの部屋に、睡眠時間を減らして夜遅くまで勉強している洪作の姿をイメージしてみましょう。

勉強の合間の楽しみ

犬飼も中学の教員を目指して机を並べて勉強をしていました。勉強が終わった後、犬飼とともに入る川淵の露天風呂がその頃の洪作にとっては唯一の安らぎの時間でした。下に引用させていただいたのは落合楼の露天風呂の写真です。

風にゆれる木々の音や川のせせらぎなどが聞こえてきそうですね。犬飼はお風呂の中で石川啄木(たくぼく)の歌をいくつか洪作に教えてくれます。「東海の小島の磯の白砂に・・・」なる有名な歌もその一つでした。こちらで実際に入浴して口ずさんでみてはいかがでしょうか?

小説の舞台の一つ・浄蓮の滝

犬飼との思い出の場所の一つが浄蓮(じょうれん)の滝。中伊豆エリアでも有名な観光地です。パワースポットとしても人気で、夏を中心にマイナスイオンシャワーを浴びにくる人でにぎわいます。犬飼はある思いをもってここを訪ねますが、このあたりのお話はネタバレになるので、実際に小説でお楽しみください。

湯ヶ島の思い出

洪作の小学校時代も終わりに近づいたころ、父の転勤地・浜松で一緒に住むために湯ヶ島を離れることになります。おぬい婆さんとの別れなど様々な感情をいだいての旅立ちでした。出発の前日、洪作は友人たちとともに「西平の湯」や「熊野山の墓地」など、地元の思い出の場所を巡ります。お墓への道は今でも下の写真のような雰囲気。ジブリ映画の中のようなのどかな景色です。

旅立ち

伊豆から浜松に向かう途中この作品でも印象的な場面があります。おぬい婆さんと2人で豊橋に向かった時には大都会と感じた大仁(おおひと)駅周辺の商店街で、洪作の前を映画広告のための楽隊が通り過ぎていきました。

抜粋すると「大太鼓と小太鼓、それにクラリオネットと、楽器も三つであり、楽師も三人であった・・・」。下のような風景だったのでしょうか?洪作は、この風景を見て以前とは違う印象をいだきますが、詳細は小説にてお楽しみください。

井上靖氏について

最後に井上靖氏について記載します。 明治40年に北海道の旭川市生まれ。軍医だった父の転勤で転居が続きます。この小説の舞台になる湯ヶ島では5歳から13歳まで生活し、戸籍上の祖母かの(おぬい婆さんのモデル)に育てられます。

その後は沼津中学校や第四高等学校に進んでいきますがこちらの様子は3部作の続編「 夏草冬濤(なつくさふゆなみ)」や「北の海」に描かれています。自伝的な小説以外にも「敦煌(とんこう)」や「天平の甍(いらか)」、「わが母の記」などは映画化されている有名な文学作品です。

旅行の情報

落合楼村上

明治初期に伊豆の名士の迎賓館として建てられたのが始まりです。以後、与謝野晶子や川端康成などの文人の常宿ともなっています。かけ流しのお湯や地元の食材を使った懐石料理でゆったりとくつろぐことができるでしょう。

[住所]静岡県伊豆市湯ヶ島1887-1
[電話番号]0558-85-0014
[アクセス] 修善寺駅から東海バスを利用、湯ヶ島で下車
[参考サイト]https://www.ochiairo.co.jp/ja-jp

浄蓮の滝

落差が25m・幅7mの伊豆を代表する滝です。白く豪快に落ちる滝とエメラルド色の滝つぼは、写真スポットとしても有名。特に紅葉の時期になると多くの観光客でにぎわいます。

[住所]石川県小松市二ツ梨町一貫山40
[電話番号]0558-85-1125(浄蓮の滝観光センター)
[アクセス] 修善寺駅からバスを利用。浄蓮の滝バス停で下車
[参考サイト] http://www.j-taki.com/