内田百閒著「第二阿房列車」の風景(その2)

横手への旅

寝台急行・鳥海

新潟から戻って4日目に先生一行は横手に向かいます。今度も目的は雪を見ること。乗り込む列車は夜9時30分上野発の「急行鳥海」なる寝台列車です。下に引用させていただいたのは上野と青森を結ぶ「鳥海」の後継列車「急行津軽」の写真。その後「特急あけぼの」と名前を変え東北新幹線の登場により1998年にその役目を終えます。百閒先生が横手に向かった時代、けん引するのは蒸気機関車だったようです。ここでは、先頭車両に蒸気機関車をイメージし先生たちが乗り込む場面を作ってみます。

宴会場所を確保

先生たちが乗り込んだのは二等寝台。下に引用させていただいたような2段のベッドがあるタイプでした。上の段を山系君、下の段を先生が使います。家から持ってきた料理を肴に一杯やる算段をする先生。下段で2人で飲むとすると隣のベッドや通路の人が気になります。考えたあげく、寝台車内にある2人掛けの喫煙室を食事スペースとして利用することを思いつきます。

お酒のお供は

ボイ(ボーイ)の了解を得た先生たちは早速、喫煙室に陣取り宴会を始めます。お酒は魔法瓶2本にたっぷりとお燗ではいっています。つまみは家で作ってもらった「ウドとさやえん豆のマヨネーズあえ」や「うずらの卵のゆで玉子」、「鶏団子」など。読んでいるだけでもお腹が減りそうです。下に引用させていただいたのは「ウドとさやえんどうの白和え」の写真です。味付けは少し違いますが先生たちの食べていたのもこのような美味しそうな食べ物だったのではないでしょうか。

つまみのお品書きはさらに続きます。「玉子焼き」や「平目のつけ焼き」、「平目の煮しめ」などとのこと。次に引用させていただいたのは「平目の煮つけ」の写真です。こちらもお酒に合いそうな食べ物。「汽笛一声動き出したから、始めた」とあります。ここでは心地よい線路の音を聴きながらゆったりとした心持ちで食事をする先生たちの姿をイメージしてみます。

行きつけの旅館に宿泊

朝早く横手駅に着いた先生一行は「第一阿房列車」でもお世話になった旅館に車で移動します。下に引用させていただいたのは百閒先生のほかたくさんの有名人も愛した「(旧)平源旅館」の写真です。この場所を利用して、旅館に入った先生が近くを流れる雄物川支流の川の音を懐かしむ光景をイメージしてみます。

横手名物の一つ「かまくら」だが・・・

先生が到着した日は「かまくら」の行事が終了したばかりと旅館の人から聞かされます。「かまくら」を造るだけでなく「子供がその中へ這入って水神様のお祭りをする」イベントとのこと。下に引用させていただいたのは大正または昭和の「かまくら」の写真です。先生も車で「駅から来る途中、道ばたで幾つも見た」といっています。行事が終わってもこのように遊んでいる子供たちの姿も見たかもしれません。

もう一つの横手名物は「梵天」

もう一つの行事「梵天(ぼんでん)」はちょうど開催されているところでした。「棒の先にいろんな物を飾りつけたのを振り立てて・・・近郊の神様に納める」行事とのこと。旅館の玄関にでた先生が「ぼんでん」のメンバーからお酒のふるまいを受ける場面があります。下に引用させていただいたのは今も行われている横手市内の「ぼんでん」の風景。時代は違いますがこの風景のどこかにお酒をすすめられ「お目出度と云って、飲み干して杯を返した」という先生の姿を想像してみます。

夜は「岡本新内」を鑑賞

夜になると宴会が始まり、伝統芸能の「岡本新内」を披露してもらいます。横手市に江戸時代から伝わる舞踊で三味線と唄に合わせて踊るもの。下に引用させていただいたように昭和初期にはたくさんの踊子さんが在籍していました。踊りについては詳しくないという先生も「踊りの二人の姿が、ありありと鶴の姿に見えた」と息を呑む場面もあります。ここでは下のような踊子さんが優雅に踊る姿を見てご機嫌になる先生をイメージすることにします。

踊りを鑑賞したりお酒を飲んだりして楽しく過ごした先生たちは宿まで「箱橇(そり)」で送ってもらいます。下に引用させていただいたのは先生が旅をしていたのと同じ昭和28年の「箱そり」の写真です。電灯の明かりで照らされながら「雪の上を軽々と辷(すべ)っていく」先生と山系君の姿をイメージします。

次の日も山系君の鉄道関係の知り合いがやってきて一緒に痛飲。三日目にはやはり「急行鳥海」にのって帰途につきます。

旅行の情報

梵天・かまくら

百閒先生が横手を訪問した時期は旧暦の正月の時期。梵天やかまくらのイベントが次々と行われていました。参考サイトにさせていただいたのは横手市の今年(2020年)のイベント情報です。各イベントは「横手の雪まつり」という大きなくくりの中で開催。2月2日の「ぼんでん唄コンクール」から始まり2月15・16日の「かまくら」イベントをはさんで2月17日の神社での梵天奉納祭で締めるスケジュールでした。特に最終日には下に引用させていただいたような勇壮な奉納祭が実施されます。
【住所】市内各地
【電話】0182-33-7111(横手市観光協会)
【参考サイト】 https://yokotekamakura.com/01_event/04_winter/kamakura_kaisai.html

旧平源旅館(ゲストハウス平源)

百閒先生も愛用したとされる旧平源旅館の建物は、リノベーションされ結婚式場などとして利用されています。横手川が近くを流れる立地は小説とは違いますが(小説では雄物川の支流・旭川)、明治初期からの歴史を感じさせる建物は充分に先生の時代をイメージできます。予約すればランチやディナーなどで建物に立ち入ることも可能。贅沢な雰囲気のなかで美味しい料理をご堪能ください。
【住所】秋田県横手市大町6-24
【電話】0182-33-1100
【アクセス】横手駅から徒歩で約15分
【参考サイト】 https://hiragen.iyataka.co.jp/