村上春樹著「ダンス・ダンス・ダンス」の風景（その９最終回）
最後の冒険
ハワイでの数週間の休憩を終えた「僕」はキキ探しの冒険を再開。知り合いとの悲しい別れなどを経ながら物語はフィナーレを迎えます。
おつまみ作りの天才
日本に帰ってきてからは「何日かおきに五反田君と会って酒を飲んだり、食事をしたりした」という生活。最初に「僕」のアパートに来たときは「わかめと海老の酢の物を作り、わさび漬けと大根おろしに細かく切ったはんぺんをからめ・・・」といった酒のつまみをつくります。
そして、作るのを隣で見ていた五反田君からは「天才的だ。僕にはとてもできない」と褒められます。下に引用させていただいた美味しそうな料理の写真の脇に「僕」と五反田君の姿を置いてみましょう。
また、「我々は黒ビールを飲みながら、僕の作ったつまみを食べた。ビールがなくなるとカティー・サークを飲んだ。そしてスライ＆ザ・ファミリー・ストーンのレコードを聴いた」とあります。下に引用させていただいたのはスライ＆ザ・ファミリー・ストーンの動画です。「六〇年代的な夜」をイメージしながら曲を聴いてみましょう。
五反田君のマセラティと交換
自宅にきた五反田君から「もしよかったら君のスバルを僕にしばらく貸してくれないかな？かわりにマセラティを置いていくから」と依頼されます。元女房とこっそり会うのにマセラティは目立ちすぎるとのこと。「あのファッショナブルなスーパー・カーを替わりに置いていかれるのはとても困る」と断ろうとしますが、結局交換することになります。
マセラティの車種は明記していませんが、以下には80年代のスーパーカー・マセラティメラクの写真を引用させていただきました。ここでは駐車場に入れる時に「アクセルをちょっと踏むと月まで飛んでいってしまいそうだった」と感じる「僕」の姿をイメージしてみます。
シェーキーズへ
霊媒的な感覚のあるユキは映画「片想い」から、五反田君がキキの首を絞め、マセラティでその遺体を運んだことを感じ取ります。訪問してきた五反田君に確かめることに！下に引用させていただいたのは五反田君と僕が最後に会った「シェーキーズ」に関連する写真です。
「シェーキーズは混んでいて、うるさかった。バンド・スタンドがあって、そこでそろいのストライプのシャツを着たディキシーランド・ジャズのバンドが「タイガー・ラグ」を演奏し・・・」。映画スターがいても誰も気づかない賑やかな店内を想像してみます。
悲しい別れ
その後の五反田君についてはネタバレすぎるので控えさせていただきます。下に引用させていただいたのは50年ほど前にテレビ「少年探偵団 BD7」で怪人二十面相役をされていた団次郎（団時郎）さんの写真です。個人的な感想になりますが、かっこいい映画スターが実は・・・、という設定が五反田君とかぶりました。
旅行などの情報
シェーキーズ（渋谷店）
五反田君と「僕」が食事をする場所として登場するお店です。1973年にアメリカから上陸し、当時あまりなじみのなかったピザをお手頃価格で提供し普及に成功しました。イタリアのパンタイプのビザとくらべて軽い食感が特徴。ペパロニやダブルチーズ、ウィンナー、エビ＆マヨネーズなどトッピングが多彩なのも人気のポイントです。下に引用させていただいたように五反田君たちが飲んだ美味しいビールも準備されていますよ。
現在は「ダンス・ダンス・ダンス」の中のように生バンド演奏は行われていませんが、映画スターが来ても分からないほど賑わっているのは今も同じです。
住所：東京都渋谷区宇田川町32-15ビアビル2Ｆ
アクセス：JR渋谷駅から徒歩約6分
参考サイト：https://tabelog.com/tokyo/A1303/A130301/13012585/
ホテル・ニューグランド
記事内では取り上げませんでしたが、仕事のため横浜に前入りする五反田君をホテルに送りとどけるというシーンがあります。五反田君が宿泊したのは昭和2年開業のクラシックホテル・ニューグランドです。客室は海側やみなとみらい側、マリンタワー側の3種類の眺めから選べます。また、マッカーサー元帥が滞在した「マッカーサーズスイート」なる歴史的な部屋にも宿泊が可能です。
中華街や山下公園といった観光スポットの近くにあり、ホテル内にあるカフェはドリアやナポリタンなどの発祥店としても知られています。下にはホテルの全景の写真を引用させていただきました。映画カサブランカのハンフリー・ボガードのように「トレンチ・コートの襟を立てて、春の小雨の中」ホテルの中に消えてゆく五反田君をイメージしてみましょう。
住所：横浜市中区山下町10番地
アクセス：みなとみらい線・元町中華街駅から徒歩約1分
参考サイト：https://www.jalan.net/yad319923/
