村上春樹著「ダンス・ダンス・ダンス」の風景(その3)

冒険の始まり

「いるかホテル」で人生を再出発させようとやってきた「僕」ですが、ホテルの経営者が変わり、大資本の手がけるチェーンホテルに変貌していました。その背景に不審を感じた「僕」はフロントやホテル周辺で聞き込みをしますが、成果が得られません。そんな時、ある女性との出会いから物語が動き始めます。今回はホテル周辺での出来事をイメージしながら物語を追っていきましょう。

ホテル周辺はスターウォーズの世界

「僕」はホテル周辺を歩き回って「昔に比べると、いるかホテルのある地域ははっきりとした変化」があることに気づきます。「何軒かの店は戸を閉ざし、そこに建築予定の札がかかっていた」とあります。

都市の再開発中ということを実感した以外の収穫はなく、ホテルに戻って26階にあるバーに立ち寄ります。バーテンダーとの世間話の合間に「この辺も変わったね」とホテルについての情報を聞き出そうと試みますが、「このホテルの前は東京のホテルで働いていたので、札幌のことは殆ど何もしらない」との回答でした。


「バーの壁は全面ガラス窓になっていて、そこから札幌の夜景が見えた」とあります。下に引用させていただいたのは綺麗な札幌の夜景です。雄大な眺めや店内の近代的な設備や調度品は、「ここにある何もかもが僕に『スターウォーズ』の宇宙宇都市を思い起こさせた」とあります。

そして「ふたりづれの中年の男が奥まったテーブル席でウイスキーを飲みながらひそひそと声をひそめて話して」います。下に引用させていただいたのはスターウォーズの基地の画像です。ここに、「ダースヴェーダ―の暗殺計画を練っている」かのように真剣に密談している2人の男を姿を置いてみます。

ジェネシスのトレーナーを着た女の子

また、「右手のテーブル席には十二か十三くらいの女の子がウォークマンのヘッドフォンを耳にあてて、ストローで飲み物を飲んで」いました。「ユキ」という名前の「ダンスダンスダンス」の主要なキャラクターで、「ブルージーンズに白いコンヴァースのスニーカーを履き、「GENESIS」というレンダリングの入ったトレーナー・シャツを着て」いました。

「ジェネシスーーーまた下らない名前のバンドだ。でも彼女が・・・着ていると、それはひどく抽象的な言葉であるように思えてきた。」とあります。シャツは以下に引用させていただいたような柄だったかもしれません。

進展がなく天候も悪化

次の日、何もやることが思いつかなかった「僕」は、ホテル内の理髪店に向かいます。「このホテルが出来る前に同じ名前の小さなホテルがここにあったんだ」と声をかけてみますが、「メンズ・ビギのシャツを着」たクールな理髪師は特に関心を示さず、新しい情報は得られません。

昼食をとるためにレストランに入りますが、「今にも雪が降りそう」で、「地上にある何もかもが灰色に染まって見えた」とあります。以下に引用させていただいたのは「ガリバー旅行記」の挿絵です。ここでは「雲はぴくりとも動かず、『ガリバー旅行記』にで出てくる空に浮かぶ国みたいに、都市の頭上を重く覆っていた」と表現されている陰鬱な風景をイメージしてみましょう。

明るい兆しも

ホテルで受付の前を通ると「眼鏡をかけた女の子」が僕を呼び止めます。最初にチェックインの対応をしてくれた女性で、新旧のいるかホテルについて何か事情を知っていそうでした。彼女はホテルについて「仕事が終わったあとで、会ってお話ができませんか?」とのこと。

「僕」は彼女との約束のお店に向かいます。下に引用させていただいたのはジェリー・マリガンの演奏するジャズ音楽です。ここでは、「五階建てのビルの地下にあるこぢんまりとしたバーで、ドアを開けると程よい音量でジェリー・マリガンの古いレコードがかかっていた」という場面を想像してみます。

ホテルでの出来事について

少し遅れてやってきた彼女はブラディ・マリーを注文します。現ホテルについて「立ち退き拒否していた人を会社がヤクザか右翼を使って追い出した」と週刊誌に書かれたことや、「ドルフィン・ホテル(いるかホテル)っていう名前が付いたのは、その前のホテルとの絡みがあったから」ということを聞き出します。更に、従業員用の仮眠室がある16階で、夜中に不思議な体験をしたことも・・・・。

下に引用させていただいたのは、美味しそうなブラディ・マリーの写真です。ここでは、話に夢中になって「何杯注文したかわからなくなるくらい飲んでいた」僕と彼女の姿をイメージしてみましょう。

プロフィールを語る「僕」

彼女はホテルでの恐怖体験を語った後、「僕」についても質問をします。「面白くない話だよ」と前置きし、「三十四で、離婚経験があって、文章を書く半端仕事をして生計を立てている。スバルの中古に乗っている。中古だけれど、カー・ステレオとエアコンがついている」と答えました。下には、1970年代に発売されていたスバル・レオーネ(初代)の写真を引用させていただきました。

新旧いるかホテルの変遷についての情報などが得られ、膠着状態だったストーリーは進展を見せ始めました。次回はホテルで起きる怪奇現象についても触れていきたいと思います。

バンドTシャツの情報

GUのバンドTシャツ

今回は旅行情報のかわりに、小説内で「ユキ」が着用していたバンドTシャツについてご紹介していきましょう。ヴィンテージのバンドTは高値で取引されていますが、ファストファッションブランドのGUなどでも気軽に購入することができます。例えば、下に引用させていただいたようなローリングストーンズのTシャツは、加工により90年代の雰囲気に仕立てられた商品。価格は1000円ほどとリーズナブルです。

参考サイト:https://www.gu-global.com/jp/ja/feature/cms/therollingstones-collab/men/

しまむらのバンドTシャツ

衣料品のチェーンストア・しまむらでも多彩なバンドTシャツを販売中です。下に引用させていただいたのは、今年(2022年)夏に発売されたKISSのTシャツです。全員が白塗りメイクの柄はインパクト大で、肌触りがよい綿100%の素材が用いられています。夏にはアウターとして、春秋にはアクセントのあるインナーとしてコーディネートを楽しめるでしょう。

関連サイト:https://twitter.com/shimamura_gr/status/1506828650376663042